子供の頃から聴いてきた音楽を77曲選び描いた作品 (2006年)
うたをうたう
僕はこんなふうに考えました
僕らは無邪気だったと
僕はこんなふうに感じました
それは楽しかったと
僕はこんなふうに思いました
勇気がでることもあるし、涙がでることもあると
僕はこうして歌を覚えました
そして僕らも歌を覚えてきたのです
庭が、窓が、カーテンが、天井が、机が、目の前にあって
僕らはほんの少しの時間、声を高くしたり低くしたり裏返したりして
自分の声を注意深く耳で聴いたのです
光があります
風があります
虫がいます
鳥や猫もいます
僕らは僕らの声を空気の中に放り出して自由になったのです
友人がひとりできます
仲間がひとりふえます
顔見知りがひとりやってきます
近所のひとが見つめています
僕らはそこでみんなで歌をうたえることを知ります
同じような気持で同じように口をそろえて
僕は枯れ枝を拾ってみんなの前でふりました
僕は足を踏み鳴らして調子をとりました
手をたたいて体を動かします
ひとりは手を高く上げて
ひとりはくるくるまわって
ひとりは腰をくねくねさせて踊りだします
あるひとは楽器を弾いています
ギター、ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、笛
太鼓の音が響きます
僕はもういちどこんなふうに考えました
それはきっと楽しいだろうと
僕はふたたびこんなふうに感じました
それは無邪気なことなのだろうと
僕はもういちどこんなふうに思いました
勇気も出るし、涙も出るし、きっと笑顔も溢れるだろうと
でも、それも、やがては
覚えなければならないことがたくさんあって
いつの間にか消えてしまったのです
新しい時間は新しい夢をたくさん与えてくれました
大きく豊かで小さく果てしのないものを
儚いということはなく、次々に手にしていけるものです
でも、僕は知っています
それでもまだみんなが忘れずにいることを
だから、僕は見つめ続けています
変わることのない光や風の中を
そして、僕は待っています
遠くの方からやってくるのを
でも、最初にやらなくてはいけないのは
まず自分が大きく口をひらくこと


