丘の上から海を見つめながらの個人的な日常をイメージ化した作品 (2007年)
砂浜で散髪をする
砂浜にベントウッドの椅子を持ち出し
裸になって肩まで長く伸びてしまった髪の毛を切ってもらう
シャキッとハサミで前髪を切ると
風に流され、パラパラと砂浜に散らばっていくのがわかる
後ろ髪を切ると、肩や背中にへばりつきながらも、やはり風に舞っていく
髪の毛が、風に吹かれて落ち着かなくて、上手く揃えて切れなくても
どんどん短くしてもらう
両目を左右交互にいっぱい寄せてみると
まだまだ髪の毛の端が見えているから
もっともっと短くしてもらう
耳の付け根の辺りまで短くしてもらう
首筋に手を当てると、ひやっとして
掌でそのまま包み込むように首を押さえていると不思議な安堵感がある
そうして、いい加減でもいいから髪の毛を切ってもらうことを続ける
どんな頭になって、どんな顔になっただろう
体中に付いた黒く短い髪の毛を一気に落としてしまおうと
椅子から立ち上がり
砂浜を駆け、大きな波の中に飛び込んでみる
波の泡が頭から足の先までぐしゃぐしゃと弄繰り回してくれるので
海中で何度も身を捩り、体に付いている細かな毛も洗い流す
濡れた体で、椅子のところに戻ってみると
切り取られた髪の毛があちこちに散乱している
砂浜だから、自然に戻したような気持ちになれるかと思ったが
やはりゴミに違いない
できる限り髪の毛を拾い集め
深く掘った砂の中に埋めてみる
少し気にはなったが
それで、終りにすることにした
浜辺の風の中でのひとつの時間
後ろめたさが残ると、記憶は永遠に続いていくものだ
何かが気持好かったのではなくて
そうしてまだ残されている時間を過ごしていくために
単純で簡素で楽しくもある小さなジレンマを抱え続ける
懲りない時間を繰り返す毎日はこうして始まり終わる

